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岩本工業のよもやま話~安全に掘り進めるNATM~

皆さんこんにちは

株式会社岩本工業の更新担当の中西です。

 

~安全に掘り進めるNATM~

 

山岳部に道路や鉄道を通すためには、山の内部を掘り進める必要があります。

山は外から見ると大きく安定しているように見えますが、内部の岩盤には亀裂、断層、地下水、風化部分などが存在します。

掘削によって地山の一部を取り除くと、それまで保たれていた力のバランスが変化します。適切な支えを設けなければ、岩塊の落下や地山の崩壊につながる可能性があります⚠️

山岳トンネルで広く使われている方法の一つがNATMです。

NATMでは、地山が本来持つ支える力を生かしながら、吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工などを組み合わせて、掘削した空間を安定させます。

今回は、山岳トンネルを少しずつ安全に掘り進めるNATMの技術についてご紹介します。

切羽を観察する

トンネル掘削の最前面を「切羽」と呼びます。

切羽は、これから掘り進める地山の状態を直接確認できる重要な場所です🔍

岩の種類、硬さ、亀裂の向き、湧水、岩塊の緩みなどを観察します。

事前調査では硬い岩盤と予測されていても、実際には細かな亀裂が多く、崩れやすいことがあります。

切羽の一部だけ色や湿り方が違う場合、前方に別の地層や地下水が存在する可能性があります。

観察結果を記録し、設計時に想定した支保パターンが適切かを判断します。

切羽は工事の進行によって次々と変わるため、毎回の観察を積み重ねることが重要です。

発破掘削と機械掘削を使い分ける

硬い岩盤では、ドリルジャンボなどで複数の穴を開け、火薬を装填して発破する方法があります💥

穴の位置、深さ、間隔、火薬量、起爆順序によって、岩盤の割れ方が変わります。

火薬量が多すぎると、必要以上に岩盤を傷め、掘削面の外側まで亀裂を広げる可能性があります。

少なすぎると十分に掘削できず、大きな岩塊が残ります。

トンネルの形に沿って効率よく岩盤を破砕する発破設計が必要です。

比較的軟らかい地盤では、自由断面掘削機や大型のブレーカーなどによる機械掘削が使われます⚙️

機械掘削は、岩盤の状態を見ながら少しずつ削れることが特徴です。

ただし、硬すぎる岩盤では刃の摩耗が大きくなり、作業効率が低下します。

地質や周辺への振動の影響を考え、適切な方法を選びます。

発破後の安全確認

発破後は、すぐに切羽へ近づくことはできません。

発破によって発生したガスや粉じんを換気し、不発火薬がないか、岩盤が不安定になっていないかを確認します🌬️

切羽や天井部分には、落下しやすい岩が残ることがあります。

目視や専用の機械を使い、浮石を取り除く「こそく」を行います。

この確認を省略して次の作業へ進むと、作業員が切羽近くにいる状態で岩塊が落下する危険があります。

厚生労働省が公開している災害事例でも、浮石除去を行わないまま装薬作業へ移行し、切羽から岩塊が崩落した事故が紹介されています。

作業時間を短縮するために、安全確認を省略することはできません。

ずりを搬出する

発破や機械掘削によって発生した岩石は、積込み機械やホイールローダーで集め、ダンプトラックなどで坑外へ運びます🚚

切羽周辺へずりが残っていると、次の支保作業ができません。

大きすぎる岩塊は、運搬できる大きさへ小割りします。

積込み中は、大型車両や重機が狭い坑内で動きます。

作業員が重機の死角へ入らないよう、進入禁止範囲や合図を決めます。

粉じんが多い場合は、散水や集じん設備を使用します。

ずり出しは、掘削と支保の間をつなぐ重要な工程です。搬出が遅れれば、その後の作業も止まってしまいます。

吹付けコンクリートで地山を覆う

掘削した直後の地山表面へコンクリートを吹き付け、細かな岩の落下や地山の緩みを抑えます。

吹付けコンクリートは、凹凸のある掘削面へ密着し、地山と一体となってトンネルを支えます🧱

NATMでは、掘削、ずり出し、鋼製支保工、吹付けコンクリート、ロックボルトなどの工程を繰り返しながら進みます。

吹付け時には、ノズルと壁面の距離や角度を調整します。

斜めから吹き付けると、材料がはね返りやすくなり、凹部へ十分に入らない場合があります。

一度に厚く付けすぎると、材料が落下する可能性があります。

必要な厚さを均一に確保し、特に天井や支保工の裏側へ隙間なく施工する技術が必要です。

鋼製支保工を建て込む

地山が弱い場所では、アーチ状の鋼製支保工を設置します。

支保工は、吹付けコンクリートやロックボルトと協力して、掘削した空間を支えます🏗️

重量のある鋼材を切羽近くで組み立てるため、専用のエレクターなどを使用します。

左右の脚部位置、アーチの高さ、間隔を確認し、設計された位置へ建て込みます。

支保工が傾いていると、次の支保工との間隔がずれ、覆工コンクリートの厚さにも影響します。

地山との間に大きな隙間がある場合は、吹付けコンクリートなどで確実に充填します。

金属の枠を置くだけではなく、周囲の地山と一体化させることが重要です。

ロックボルトで地山を一体化する

ロックボルトは、トンネル周囲の岩盤へ放射状に打ち込む長い棒状の部材です🔩

表面付近の緩みやすい岩盤を、奥の安定した地山へ固定する役割があります。

削孔位置、角度、長さを確認し、設計どおりに施工します。

穴の内部へ定着材を充填し、ロックボルトを固定します。

穴の中に水や粉じんが残っていると、十分に定着しない可能性があります。

地山の状態によっては、通常より長いボルトを使ったり、本数を増やしたりします。

ロックボルトは完成後に見えにくくなりますが、地山の力を活用するNATMにとって重要な部材です。

鉄道建設・運輸施設整備支援機構も、NATMを、吹付けコンクリート、鋼製支保工、ロックボルトによって地山を支える工法として紹介しています。

一度に掘る長さを調整する

地山が安定している場所では、一定の長さをまとめて掘れる場合があります。

一方、軟らかく崩れやすい地山では、一度に長く掘ると、支保工を設置するまでの無支保時間が長くなります。

そのため、一回当たりの掘削長を短くし、掘削後すぐに支える方法を取ります📏

掘削速度だけを高めても、崩落や手戻りが発生すれば、結果的に工期は長くなります。

地山の状態に合った掘削長と作業サイクルを選ぶことが重要です。

補助工法で弱い地山を支える

切羽前方の地山が弱い場合は、掘削前に補助工法を行います。

トンネル外周に沿って鋼管を打ち込み、屋根のような支えをつくる方法があります。

地盤へ注入材を入れ、土や岩を固めることもあります💉

切羽からボルトや鋼管を前方へ施工し、掘削時の崩壊を防ぐ方法もあります。

補助工法は工期や費用を必要としますが、地山が崩れてから復旧するより、安全で確実です。

地質調査、切羽観察、計測結果をもとに、必要な範囲へ適切に施工します。

トンネルの変形を計測する

NATMでは、掘削したトンネルがどの程度変形しているかを測定します📊

壁面同士の距離、天井部の沈下、地表面の変化などを定期的に確認します。

掘削直後に大きく動き、その後落ち着く場合もあれば、時間が経っても変形が続く場合もあります。

計測値が予測を超えて増加している場合は、支保工の強化、掘削長の短縮、仮インバートの設置などを検討します。

見た目に変化がなくても、数ミリ単位で動いている可能性があります。

測定結果をグラフ化し、変化の速さまで確認することが大切です。

防水と覆工コンクリート

初期支保によってトンネルの変形が落ち着いた後、防水シートや排水材を施工し、内側へ覆工コンクリートを打設します。

覆工コンクリートは、トンネル内面を整え、長期的な耐久性や機能を確保します🧱

防水シートへ穴が開いていると、完成後に漏水が発生する可能性があります。

鉄筋や固定金具、作業足場などで傷つけないように施工します。

型枠を設置し、コンクリートを左右均等に打ち込みます。

片側だけ先に高く入れると、型枠へ偏った圧力がかかります。

打設後には、温度や湿度に注意して養生し、必要な強度を確保します。

貫通時の測量精度

トンネルを両側から掘り進める場合、最後に中心位置が正確に合わなければなりません🎯

地上の基準点から坑内へ測量基準を移し、掘削方向と高さを管理します。

長いトンネルでは、わずかな角度の誤差が、先へ進むほど大きな位置ずれになります。

定期的に測量し、方向を修正します。

温度、機械の据付、視界なども測量へ影響するため、精密な管理が必要です。

貫通は工事の大きな節目ですが、その瞬間を支えているのは、日々の地道な測定です。

まとめ

山岳トンネルのNATMでは、切羽を観察し、掘削、ずり出し、吹付けコンクリート、鋼製支保工、ロックボルトを繰り返しながら進みます。

地山が弱い場合は、掘削長を短くし、補助工法や支保工を強化します。

重要なのは、最初の設計をそのまま守ることだけではありません。

実際に現れた地質や計測結果を読み取り、最適な方法へ調整することです。

山の力を理解し、必要な部分だけを適切に支えながら、少しずつ安全な空間をつくること。それが、山岳トンネル工事におけるNATMの技術なのです⛏️🏔️✨