オフィシャルブログ

岩本工業のよもやま話~地質調査と施工計画~

皆さんこんにちは

株式会社岩本工業の更新担当の中西です。

 

~地質調査と施工計画~

 

道路や鉄道、水路、地下通路などを山や地中へ通すトンネル工事は、私たちの暮らしや産業を支える重要な土木工事です。山に囲まれた地域の移動時間を短縮したり、都市部の限られた土地を有効に活用したり、雨水や河川水を安全に流したりするために、トンネルはさまざまな場所で活躍しています🚇

しかし、トンネル工事は、完成した構造物の形だけを設計すれば進められるものではありません。

地中は、工事を始める前にすべてを見ることができない空間です。硬い岩盤が続いていると思って掘り進めた先に、急に軟らかい地層が現れることもあります。大量の地下水が湧き出したり、断層や亀裂の多い地山に遭遇したりする可能性もあります。

そのため、トンネル工事業では、掘削を始める前の地質調査と施工計画が非常に重要です🔍

今回は、安全で高品質なトンネルをつくるために欠かせない、調査・計画の技術についてご紹介します。

トンネルの目的と条件を整理する

トンネルには、道路トンネル、鉄道トンネル、共同溝、上下水道、導水路など、さまざまな用途があります。

道路トンネルでは、自動車が安全に走行できる幅や高さに加え、照明、換気、非常設備、排水設備などが必要です🚗

鉄道トンネルでは、車両の大きさ、走行速度、軌道、電気設備、保守作業の空間などを考えます。水路トンネルでは、流れる水の量や圧力、内面の耐久性などが重要です。

同じ場所へつくるトンネルでも、用途によって断面形状、勾配、仕上げ、必要設備が異なります。

工事業者は、完成後の使われ方を理解し、施工中だけでなく、維持管理まで考えた計画を立てます。

地形と地質を調べる

トンネル工事の計画では、地表の地形や周辺環境を確認します。

山の傾斜、谷、河川、住宅、道路、鉄道、送電線などを調べ、坑口をどこへ設けるかを検討します🗺️

坑口は、トンネルへの入口であると同時に、掘削した土や岩を運び出し、機械や資材を搬入する場所です。十分な作業スペースを確保できるか、大型車両が進入できるか、周辺住民へ大きな影響を与えないかを確認します。

地質調査では、地表の観察、ボーリング調査、物理探査などを組み合わせ、地下の状態を推定します。

採取した試料から、岩や土の種類、硬さ、亀裂、水分などを調べます。調査結果は、掘削方法や支保工の種類を決める重要な情報になります。

ただし、限られた地点の調査だけで、長いトンネル全体の地質を完全に把握することは困難です。

事前調査は地中の状態を予測するためのものですが、施工中の観察や計測によって、常に情報を更新する必要があります。

地下水の状態を確認する

トンネルを掘ると、岩盤の亀裂や砂質地盤から地下水が流れ込むことがあります💧

少量の湧水であれば排水設備で対応できる場合がありますが、大量の水が急に流入すると、切羽の崩壊や作業場所の浸水につながる可能性があります。

また、トンネル工事によって地下水の流れが変わると、周辺の井戸、湧水、河川、植物などへ影響する場合があります。

そのため、施工前に地下水位や湧水の状況を調査します。

必要に応じて、地盤へ薬液やセメント系材料を注入して水の流れを抑えたり、先に水を抜いたりする方法を検討します。

掘削中も水量や濁りの変化を確認します。湧水量が急に増えた場合は、前方に水を多く含む地層が存在する可能性があります。

水は目に見えてから対応するのではなく、地質と計測結果から先を予測することが重要です。

掘削工法を選ぶ

トンネル工事には、地山を少しずつ掘りながら支えるNATM、専用の大型掿削機を使うシールド工法、地表から掘り下げる開削工法などがあります。

鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、開削工法が地下駅などの大規模構造物に用いられ、シールド工法が駅間トンネルなどに利用されること、都市部では山岳トンネルの技術を応用した都市NATMも活用されていると説明しています。

山岳部の硬い地盤だから必ずNATM、都市部だから必ずシールドというように、単純に決まるわけではありません。

地盤の種類、トンネルの長さや断面、地下水、周辺建物、工期、費用などを総合的に検討します。

一つの長いトンネルで、複数の工法を使い分けることもあります。

工法選定は、掘れるかどうかだけでなく、安全性、環境への影響、施工後の耐久性まで考えた判断です。

坑口周辺の安定性を確認する

山岳トンネルでは、坑口付近の施工が難しい場合があります。

山の深い部分は周囲の地山に支えられていますが、坑口は地表に近く、風化した岩や土砂が多いことがあります⛰️

斜面が不安定であれば、掘削前にのり面を補強したり、落石防護設備を設置したりします。

トンネルの上部へ鋼管を打ち込み、屋根のように地盤を支える補助工法が使われることもあります。

地質がもろい場所では、先に地山を補強し、短い距離ずつ慎重に掘り進めます。実際のNATM現場でも、鋼管や注入材を使って地山を固め、崩壊を防ぐ補助工法が採用されています。

入口だから簡単なのではなく、地表や天候の影響を受けやすい坑口だからこそ、丁寧な計画が必要です。

掘削した土や岩の搬出を計画する

トンネルを掘ると、大量の土砂や岩石が発生します。これらは「ずり」と呼ばれ、坑外へ運び出さなければなりません🚚

トンネルが長くなるほど、切羽から坑口までの運搬距離も長くなります。

ダンプトラックやベルトコンベヤーなどを使い、掘削の進行を止めない搬出方法を考えます。

坑内では道幅が限られているため、掘削機械、資材運搬車、作業員の通行が重なると危険です。

車両の進行方向、待避場所、速度、信号などを決めます。

坑外では、ずりをどこへ運ぶのか、再利用できるのか、周辺道路へ泥や粉じんを広げないかを確認します。

掘る技術だけでなく、掘った物を安全に外へ出す仕組みも、トンネル工事の生産性を左右します。

換気・照明・排水を計画する

トンネルの奥では、自然の光や風を期待できません。

掘削機械や車両から発生する排気、発破後のガス、コンクリート吹付けによる粉じんなどを外へ出すため、換気設備を設けます🌬️

送風管を切羽近くまで延ばし、新鮮な空気を供給します。

照明設備も重要です。切羽の岩盤状態、重機の動き、足元の障害物を確認できる明るさを確保します💡

さらに、湧水や工事用水を坑外へ排出するポンプ、配管、排水溝などを設置します。

掘削が進むたびに、換気管、電気、給排水設備を延長しなければなりません。

これらの仮設備が遅れると、掘削作業も進められなくなります。

周辺への影響を予測する

トンネル工事では、地表の建物、道路、河川、農地などへの影響も確認します🏠

掘削によって地盤がわずかに動き、地表面が沈下する可能性があります。発破を使用する場合は、振動や騒音への配慮が必要です。

工事前に周辺建物の状態を調査し、ひび割れや傾きなどを記録することがあります。

施工中は地表面、建物、地下水位などを計測し、想定を超える変化がないかを監視します。

工事車両の通行時間や経路も、地域生活へ影響します。

学校や住宅の近くでは、通勤・通学時間を避けたり、道路清掃や騒音対策を行ったりします。

トンネルは地下につくられますが、工事は地上の地域社会と無関係ではありません。

リスクを想定した施工計画をつくる

事前調査で判明した地質や地下水の情報をもとに、危険が発生した場合の対応を決めます📋

岩盤が想定より弱かった場合に支保工をどのように変更するのか、大量の湧水が出た場合にどこへ排水するのか、機械が故障した場合にどう搬出するのかを検討します。

作業員の避難経路、非常連絡、消火設備、救護用品なども準備します。

長いトンネルでは、坑口まで戻るのに時間がかかります。

火災、停電、浸水などが発生した場合でも、作業員が安全に避難できるように計画します。

「何も起きないこと」を前提とするのではなく、「起きたときに被害を広げないこと」を考えるのが安全な施工計画です。

施工中の情報で計画を修正する

トンネル工事では、最初につくった計画を最後まで変えずに進めることが正しいとは限りません。

実際に掘った地山の状態、変形量、湧水、機械の負荷などを確認し、必要に応じて支保工や掘削方法を変更します🔄

硬い岩盤から急に軟らかい地盤へ変われば、一度に掘る長さを短くし、支保工を強化する場合があります。

切羽前方の状態を調べるため、先進ボーリングや探査を行うこともあります。

現場で得られた情報を設計者、施工管理者、作業員で共有し、早めに判断することが重要です。

まとめ

トンネル工事の安全と品質は、掘削機械の能力だけで決まるものではありません。

地形、地質、地下水、周辺環境を調査し、工法、支保、搬出、換気、排水、安全設備などを総合的に計画する必要があります。

地中の状態を完全に見ることができないからこそ、事前調査と施工中の観察・計測を組み合わせることが重要です。

計画と異なる地質が現れた場合には、無理に作業を続けず、工法や支保を見直します。

見えない地中を読み、安全に掘り進める道筋をつくること。それが、トンネル工事業における調査・施工計画の技術なのです⛰️📐✨